2007年10月5日金曜日

イタリア・オルガニストの流行

武蔵野市は毎年「国際オルガンコンクール」を開いているのだが、2004にその審査員特別マスタークラスで来日したイタリアのオルガニスト、アンドレア・マルコーン氏の公開レッスンが行なわれた。
その時の内容が「日本オルガン研究会」発行の「オルガン研究 XXXII 2004」に掲載されていて、師匠と二人でそのことが話題となったこともある。

トッカータを弾くにあたっては、G.フレスコバルディのトッカータ集第1巻の序文に、どのように演奏すべきかが箇条書きにされている。
フレスコバルディに限らず、17世紀のトッカータを弾く上でこの序文を読まずに済ませることはできない。
で、先の「流行」と言っているのは、その序文を踏まえた最近のイタリアオルガン界での解釈を指している。
フローベルガーで頻出するパッセージのひとつに長いティラータ(tirata)がある。
ティラータとは4度以上跳躍する主要音間を急速に経過音で埋める装飾のことだ。
このティラータは16分音符で始まり32分音符で終わっているが、必ずアチェルランドを伴って弾かれるものであるというのが最近のイタリア的解釈なのだそだ。
つまり譜面通りの音値やリズムではないということになる。
また、トッカータは冒頭の和音をゆっくりと、好きなように装飾やアルペジオにして弾くのが通例だ。
でも楽譜にはただ基本となる和音が書かれているだけ。
上に掲げた序文や当時の演奏習慣が理解できていないと音楽が構築できないわけだ。

ピアノなどクラシカルな演奏習慣を身に付けていると、そうした自由さや楽譜とは違う解釈に戸惑うかもしれない。
何しろ「楽譜通りに弾きなさい」と言われ続けてきたから。

やはりクラシックとバロックは本質的に違うものなのだと思う。

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