2007年10月14日日曜日

チェンバロとは














1.呼称について
ドイツではチェンバロ、フランスではクラヴサン、イギリスではハープシコード、イタリアではクラヴィチェンバロ…
国によって呼び名は様々ですが、これらはすべて同じものである。
日本ではチェンバロ、若しくはハープシコードが一般的な呼称。


2.誕生と繁栄
チェンバロの起源は古く、15世紀以前にまで遡る。
ルネサンスからバロックにおよぶ長い歴史を持つ有鍵撥弦楽器。
18世紀末にフォルテピアノが台頭するまでヨーロッパ各地で製作された。
大別してイタリアン、ジャーマン、フレミッシュ、フレンチがあり、それぞれ構造も音質もタッチも異なる。
特にフランドルのルッカース一族によって製作されたチェンバロの輝かしい音色は魅力的。
各時代、各国において膨大なチェンバロ作品が生み出された。


3.調律とピッチ
調律は現代の12平均律ではなく、中全音律や不等分律を用いる。
ピッチも現在の国際標準ピッチより半音から全音ほど低い。


4.作品への適応
例えば同じフレンチであっても時代によって、或いは製作者によって音質が異なる。
そのような事情から、イタリアの作曲家の作品はイタリアンで、フランスの作品ならフレンチで弾くのが望ましいと言える。
いずれのタイプもピアノに比べ倍音が豊かで、ポリフォニックな音楽では各声部の独立性をはっきりさせることができる。


5.発音機構と鍵盤数
発音機構は鳥の羽軸を楔型に削った「爪」で弦をはじくことで音を出す仕組みになっている。
このように機構的に見ると、「ピアノの前身」というのは間違いだ。
音質的にもリュート等の撥弦楽器に近い。
ちなみに初期フランスのクラヴサン作品には、当時流行っていたリュート音楽を模倣したものが数多くある。
音の強弱はまったく付けられないわけではなく、奏法に応じて僅かに変化する。
鍵盤数は1段であったり2段であったりとまちまち、音域も同様に様々だ。
現代ピアノのように規格化されたものではなく、ひとつひとつの楽器が個性的。
チェンバロはバロック音楽を支えた楽器のひとつであり、当時の音楽表現には適っていた。
「ピアノはチェンバロよりも優れている」といった時代背景を無視した進化論的な考え方は大変危険であり、 否定されるべきものだと思う。



※画像は久保田彰氏の楽器です。

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